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◆ おひとりさま遺産は国庫へ?「2022年度相続人なき遺産 過去最多更新中」について解説いたします
遺産の相続人がいないため、一定の手続きを経て最終的に国に納められた財産の総額が2022年度(令和4年度)、過去最高の計約769億円に上ったというニュースが流れました。
ちなみに、2021年度も当時過去最多を更新していました。
「2022年度相続人なき遺産、過去最多更新中」という相続ニュースについて、本稿で詳しく解説いたします。
2021年度「相続人なき遺産、過去最多」相続ニュースの動画解説もぜひご覧ください。
2001年度は約107憶円、その20年後の2021年度は約647憶円と、20年間で約6倍に増加しています。
また、2021年度の約647憶円から2022年度の約769憶円と、1年間で約1.18倍の増加が見られます。
衝撃的なニュースのため、当時Twitterをはじめとした各SNSでも話題となりました。
なぜ、国庫に帰属する相続人なき遺産がここ20年以上急激に増加しているのでしょうか。
国庫に帰属する相続人なき遺産が急激に増加している理由について、私は大きく3つあると考えております。
①生涯未婚率の上昇
②独居老人の増加
③遺言書作成の現状
以上の3つです。以下各々について詳述いたします。
まず、①生涯未婚率の上昇について詳述します。
上の図は、生涯未婚率の推移です。厚生労働省のホームパージに載せられております。
生涯未婚率とは、50歳の時点で一度も結婚していない割合のことです。
図のように年々増加しているわけですが、ネット含め一人で暮らすのも難しくない環境が整っていることや、女性の社会進出が進んだことも一因かもしれません。
推定値の話ですが、2040年には、男性の生涯未婚率は30%を超えてくるのではないかともいわれております。
②独居老人の増加
続いて、②独居老人の増加についてです。
上の図は、65歳以上の一人暮らしの者の動向です。
これは、総務省の国勢調査によるものです。
単独世帯のデータですので、身寄りのいる人も含まれていますが、一人暮らしされている高齢者の方の数の参考となります。
一人暮らしされている高齢者も、年々増加していっています。
2020年度(令和2年度)でいえば、女性の22.4%が男性の15.5%が一人暮らしとされています。
今は宅配サービスも発達しており、他人の手を借りなくても衣食住を満たすことができます。
よく言われることですが、昔は高齢者が一人で生活していくのが難しかったため、親族や友人が多少無理してでも同居して生活している面もあったと思います。
現代では、一人暮らししたいならできる環境ですので、好んで一人で生活されているということもあるでしょう。
①生涯未婚率の上昇により、年齢を重ねても一人で生活することに慣れ、一人暮らしを希望する人が増えたともいえるでしょう。
①生涯未婚率の上昇により、②独居老人の増加し、相続人のいない人が増えたと言えるでしょう。
そして、③遺言書作成の現状についてです。
上の図は、公正証書遺言書(遺言公正証書)の作成件数の推移です。
これは、公証人連合会のデータとなっております。
2012年(平成24年)から2015年(平成27年)まで公正証書遺言書の数は順調に伸びていっています。
2015年(平成27年)以降は、なぜか少し増加したり減少したりを繰り返しております。
このデータは、公正証書遺言書の数という、公証役場で作る遺言書の数という点に注意が必要です。
上の図は、遺言書の検認件数となります。
公正証書遺言書や法務局で保管される自筆証書遺言書ではない場合、遺言書を発見したら開封せずに家庭裁判所に検認の請求を行うことになります。
2022年(令和4年)の検認件数は20500件でした。
2020年(令和2年)に少し件数少なくなっていますが、それ以外は概ね増加傾向といえます。
この図は、2022年(令和4年)最高裁判所の「司法統計年報」によるものです。
私の実感としても、相続開始後にお客様よりご相談いただく場合、遺言書があるケースというのが年々増加しているように思います。
ただし、その遺言書の大半は不備不足により相続手続きで使用できません。
遺言書の書き方が間違っていたり表現があいまいだったりすることの方が多いのです。
加えて、遺言書自体があるかもしれないがどこにあるかわからない、すなわち発見されないこともあると思います。
亡くなった人が場所を誰にも伝えなければ、亡くなった時点で遺言書の置かれている場所を知る人がいなくなってしまうためです。
相続人のいない人が遺言書を書かない、もしくは「身近に世話になった人に相続させる」旨の遺言書を書いたがそれが発見されない、発見されたが使えない無効なものだった場合、結果として、それは自身の全財産を死後国に寄付するという遺言をしたのと変わりありません。
実際そうなる可能性が非常に高くなるのです。
現状、未婚で一人暮らしで財産渡したい人がいない、遺言書の作成の仕方もわからないという状況になっている高齢者が多いのかと感じます。
現代社会は、色々な生き方を選べるという点では自由ともいえます。
ただ、先の述べましたように、有効な遺言書を作成しない場合は、結果として、自身の全財産を死後国に寄付するという遺言をしたのと変わりありません。
そうすると、孤独と情報量が少ないという状況が続いており、そのまま何となく老後を過ごし国庫に帰属されるに至っているように思えます。
そこで、我々のような相続専門家が、特に遺言書についての情報を色々な方に届けることによって、「自分の意思を示すことができる」ということを伝えることができるのだと思います。
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執筆者 森俊介
行政書士森俊介事務所 代表行政書士
『相談者に寄り添う相続とすること』がモットー。触れた相談事例は2000件以上。相続を取り扱う司法書士・税理士・弁護士と連携しワンストップサービスを築く。各地でセミナー相談会を実施中。Youtube・Twitterでも相続・遺言情報を発信している。
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2017年 行政書士取得
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