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相続人がいない場合の相続財産はどうなるの?その精算・分与・処分手続きについて

 

 亡くなられた人に相続人がおらず遺言書がない場合、相続財産清算人を申し立てることになります。

この場合、内縁の配偶者等の特別縁故者と呼ばれる方に財産が分与されることもあります。

本稿で手続きの流れを詳述いたします。

 

 目次 

1、相続人がいない場合とは?

2、遺言書が見つかったとき

3、相続人不存在かつ遺言書がない場合の手続きの流れ

、特別縁故者とは?その該当性について

 ・特別縁故者の類型

 ・特別縁故者の申立て・不服申立て

 ・特別縁故者の具体例

 ・不動産の共有持分者との関係

5、税務上の取り扱いに注意

6、まとめ

1、相続人がいない場合とは?

 

 相続人がいない場合として、被相続人が結婚しておらず子供もおらず、両親や兄弟もすでに亡くなっており、その兄弟に子がいない場合が挙げられます。

 被相続人の法定相続人がいない場合のことですが、被相続人の戸籍を集めることによって、相続人の不存在が証明できます。

 このような場合、被相続人の自宅で死亡しているのが発見されることもあり、その場合、いとこ等の親族に警察から連絡が入ります。

 

2、遺言書が見つかったとき

 

 相続人が不存在の場合であっても、被相続人が生前に遺言書を書いていれば、その遺言書通りの相続手続を行うことができます。

 被相続人の恋人、友人、いとこ、公共施設等に自身の財産を渡す内容の遺言であれば、そのような財産分与が実現できます。

 自分で書いた遺言書である自筆証書遺言書で自筆証書遺言保管制度を利用していない場合、死後に家庭裁判所で検認手続きを経る必要があります。

 この場合、遺言書の発見者が申立人となることができます。

 遺言書の内容の実現は、遺言書内に遺言執行者がいればその人が、指定がなければ原則受遺者が行うこととなります。

 

3、相続人不存在かつ遺言書がない場合の手続きの流れ


 ※2023年4月に施行された改正民法により、従来の「相続財産管理人」は相続財産清算人に名称変更されました。

 相続人のあることが明らかでないとき、家庭裁判所は、被相続人の身の回りの世話をしていた等利害関係がある人の請求によって相続財産清算人を選任します。

 相続財産清算人とは、被相続人の有していた相続財産の管理・清算を行い、残った財産を国庫に帰属させる役割を担う人のことです。

 相続財産清算人は、相続財産の管理および清算を行い、その後も相続人が現れなければ、家庭裁判所により精算後の相続財産の全部又は一部を後述の特別縁故者に分与する審判がなされるか、なされなければ残余の相続財産を国庫に引き継ぐこととなります。

 特別縁故者が相続財産の分与を申し立てるには、相続発生後最低6か月以上の期間が必要と考えられます。

 家庭裁判所が、相続財産清算人の選任及び相続人捜索の公告広告・掲示などで一般公衆に告知することを6か月間行い、同時並行で、相続財産管理人が債権申出についての公告を2か月間行います。

 以上の手続きを経ることによって、相続人不存在が確定し、特別縁故者が財産分与を申し立てることができるようになるのです。

 

4、特別縁故者とは?その該当性について

特別縁故者の類型

 

 被相続人と特別の縁故関係があった人という特別縁故者には、3つの類型があります。

 ①被相続人と生計を同じくしていた者

 ②被相続人の療養看護に努めた者

 ③その他被相続人と特別の縁故があった者

 これらの人が特別縁故者とされ、相続人不存在の場合、請求によって相続財産の分与を受けることができるとされています。

 ③については、①②に準ずる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な交渉があった者で、相続財産をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係にあった者が認められる、という裁判例がありました。

 

特別縁故者の申立て・不服申立て

 

 特別縁故者に該当すると思われる人が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、申立てをすることになります。

 仮に特別縁故者に該当し財産分与が認められても、どの程度の分与が認められるかは個別事情により大きく異なります。

 家庭裁判所による判断に不服がある場合には、即時抗告という不服申し立てができます。

 

特別縁故者の具体例

 

 内縁の配偶者、亡長男の妻、未認知の非嫡出子、親族でない生計同一者等につき、特別縁故者と認めた裁判例があります。

 一方、4年半の療養看護や葬儀の主宰を行ったが、その過程で被相続人の財産を1200万円以上不当に利得していた者につて、特別縁故者と認めなかった裁判例もあります。

 

不動産の共有持分者との関係

 

 不動産を共有している場合に共有者の1人が死亡し、その人の相続人不存在が確定した場合、その共有持分は、民法958条の3により特別縁故者に帰属するのか、民法255条により他の共有者に帰属するのかという問題があります。

 この問題については、被相続人の合理的意思を推測して遺贈制度の補充という民法958条の3の特別縁故者制度の趣旨を優先させ、特別縁故者が共有持分の財産分与を受けるといた裁判例があります。

 

5、税務上の取り扱いに注意

 

 相続税がかかる場合、財産分与を受けた特別縁故者は相続税の課税義務が生じると考えられます。

 この場合、一般的には申告・納税をすることになりますので、相続における税務上の取り扱いに注意が必要です。

 詳しい起算点・計算・方法は税理士と相談する必要があります。

 

6、まとめ

 

 以上のように、相続人がいない場合、遺言書の存在が重要になります。

 遺言書がない場合、相続財産清算人や特別縁故者の申立てを考えることになります。

 専門家に相談しながら慎重に進めることをオススメします。専門家に相談しながら慎重に進めることをオススメします。

 

執筆者 森俊介

行政書士森俊介事務所 代表行政書士 

『相談者に寄り添う相続とすること』がモットー。触れた相談事例は2000件以上。相続を取り扱う司法書士・税理士・弁護士と連携しワンストップサービスを築く。各地でセミナー相談会を実施中。Youtube・Twitterでも相続・遺言情報を発信している。

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