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◆ 相続欠格とは?廃除との違いについて
法定相続人は親族関係により決まっており、通常相続権を有します。
もっとも、相続に関する重大な不正を行った相続人は相続権を当然に失います。
これを相続欠格といいます。
相続人が遺言書を隠した場合は、その隠し方、隠した目的等によっては相続欠格に該当します。
よく似た制度に相続人の廃除がありますが、廃除と違い、相続欠格は当然に相続人たる資格を失います。
本稿では、相続欠格の意義、欠格事由、廃除との違いについて解説いたします。
相続欠格とは、相続に関する重大な不正を行った相続人につき、その相続権を喪失させる制度のことです。
法定されている欠格事由に該当する場合、当然に、相続人たる資格を失うことになります。
欠格事由は、次の5つが法定されています。
①故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
②被相続人の殺害されたのを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではない。
③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
以上の欠格事由のうち、①②については、Ⓐ被相続人又は先順位・同順位の相続人の生命侵害に関する非行を行った相続人に対する、公益上徳義上の制裁の趣旨の規定に分類されます。
一方、③④⑤については、Ⓑ被相続人の相続人に関する遺言項への違法な干渉に対しての制裁の趣旨の規定に分類されます。
欠格事由に該当した人は、法律上当然に相続人たる資格を失います。
そして、相続開始前に死亡した場合と同様に、欠格者が相続開始時点でもはや存在していない者として扱われます。
欠格者が存在しないとみなして、相続人や相続分が確定されることになるのです。
ただし、欠格者が子又は兄弟姉妹の場合については、その直系卑属が代襲相続人となります。
相続欠格も代襲相続の原因となりえるのです。
「故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」
についてです。
殺人又は殺人未遂により、刑に処せられたことが必要です。
刑の執行猶予については、執行猶予期間の経過により刑の言渡しが効力を失った場合、相続欠格に当たらないと考えられています。
「被相続人の殺害されたのを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではない。」
についてです。
このような欠格事由があるものの、現在では、犯罪があれば告発・告訴を待たず当然に捜査が開始されるのが原則です。
告発・告訴する前に、公訴権発動により起訴された場合、この欠格事由を適用する余地はないという裁判例があります。
「詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者」
についてです。
「相続に関する遺言」とは、相続財産そのもの又は相続人の範囲に関係するものをいいます。
そうすると、遺贈を含む遺言はもとより、認知等相続人の範囲が変わる身分行為を含む遺言も入ると考えられます。
「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」
についてです。
欠格事由③と同じく、被相続人の相続人に関する遺言項への違法な干渉に対しての制裁の趣旨の規定に分類されるため、該当性を判断する際に欠格事由③同様の考慮がなされます。
「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」
についてです。
「偽造」とは、被相続人名義で相続人が遺言を作成することです。
「変造」とは、被相続人名義で相続人が自己名義で作成した遺言書に相続人が加除訂正その他の変更を加えることです。
「破棄」とは、遺言の効力を消滅させるような全ての行為のことです。
「隠匿」とは、遺言書の発見を妨げるような状態におくことです。
遺言書の破棄及び隠匿について、「相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったとき」は、その相続人は、相続欠格者に当たらないとして裁判例があります。
形式的に破棄・隠匿行為を行っただけでなく、相続に関しての不当な利益目的があることを要件としているといえるでしょう。
相続欠格者がいる場合において、相続登記をする際には、相続欠格証明書を作成する方法もあります。
この場合、書面に押印した当該欠格者の印鑑登録証明書の添付が必要となります。
この方法は、欠格者の協力を必要とするので、協力を得られない場合は、相続権不存在確認等の訴訟によって確定判決を得る必要があります。
もっとも、このような場合、家庭裁判所にて調停を行うことができる事件については、訴えを提起するより、まず家事調停を申し立てなければならないという調停前置主義によって、まず家事調停を申し立てることになります。
以上のような相続欠格とは別に、相続人の廃除という制度があります。
相続欠格が、欠格事由に該当する人の相続権を強制的に失わせるものであるのに対し、相続人の廃除は、被相続人の意思によって相続人の権利をはく奪するものです。
相続欠格は、相続人全員が対象となりえますが、相続人の廃除は、遺留分を有する推定相続人に対してのみ行えます。
相続人の廃除は、生前被相続人が家庭裁判所に申し立てるか、死後遺言に基づいて遺言執行者が家庭裁判所に申し立てるかにより実現されます。
以上の通り、相続欠格は効果が重いため慎重に判断されるものです。
その該当性、効果を主張する方法について、専門家に相談することをオススメします。
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執筆者 森俊介
行政書士森俊介事務所 代表行政書士
『相談者に寄り添う相続とすること』がモットー。触れた相談事例は2000件以上。相続を取り扱う司法書士・税理士・弁護士と連携しワンストップサービスを築く。各地でセミナー相談会を実施中。Youtube・Twitterでも相続・遺言情報を発信している。
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