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◆ 遺言書によって墓守や墓じまいすることはできる?祭祀承継について
墓地、墓石含む祭祀財産につき、亡くなられた人の指定があればそれが最優先になる旨民法で定められています。
そのため、遺言書によって祭祀承継者(主宰者)は指定できますが、その墓の処分まで実現できるかについて、以下解説いたします。
動画解説もぜひご覧ください。
墓守とは、墓を継ぐ人のことをいいます。
墓じまいとは、現在の墓を撤去し、管理者に返還することです。
当然ですが、自分の墓を墓じまいしたいならば、まず墓を継ぐ墓守を決め、その方に墓じまいの手続きをしてもらうのが原則となります。
墓じまいは、地元に残る子供が少なく墓参りがなくなるケースや、親族が高齢者だけになり墓の管理が難しくケースにおいて希望されることが多いです。
厚生労働省によると、2022年以降毎年10万件以上墓じまいが行われております。
高齢化社会のあらわれともいえるかもしれません。
祭祀承継者とは、祭祀財産を継ぐ者です。
祭祀財産とは、系譜、祭具、墳墓といったものです。
系譜とは、家系図、過去帳(家の先祖(故人)の情報が書かれている帳面のこと)等祖先以来の系統を示しているものです。
祭具とは、位牌、仏壇、仏具、神棚等、祭祀・礼拝の用に供するものです。
墳墓とは、墓石、墓碑だけでなく、その所在する土地の所有権や永代使用権等の墓地使用権を含むものです。
そして、以上の祭祀財産は原則として相続財産ではありません。
そのため、遺言書に記載がない場合でも、遺産分割協議によって帰属が決せられるものではありません。
祭祀財産を継ぐ祭祀承継者(祭祀主宰者)は、以下の順番で決まります。
① 被相続人の指定(生前行為・遺言、口頭・書面、明示・黙示問いません)
② ①がないとき、当該地方の慣習による
③ ①がなく②も明らかでないとき、裁判所の審判による指定による
民法上、①→②→③の順で決せられると定められています。
実際上は、①②が不明で③まで行うことは少なく、遺産分割協議において相続人間で話し合いで決めようとすることも少なくありません。
もっとも、法的に意味が生じるのは上記の①②③の場合であると民法上定められているのみです。
遺産分割協議書に祭祀承継者を書くことを希望される相続人たちもいます。
遺産分割協議書に書くこと自体はできますが、①②③に該当しないため法的効力は生じません。
そのため、遺産分割協議書への記載をもって、墓の管理者や他の親族に対して祭祀の承継を主張できるわけではありません。
墓守等の祭祀主宰者は遺言で指定できるものの、その後の墓の処分について単純に遺言書に書き記しても、これは単なる遺言者の希望に過ぎません。
法律上の効力がないため、いわゆる法定外事項、付言事項となります。
付言事項とは、法的効力はないものの、遺言者の考えや気持ちをメッセージとして遺言書に記載することができる事項のことです。
遺書やエンディングノートに希望を書いた場合と変わらないことになります。
もっとも、遺言者の希望する墓の処分を義務として遺産を取得できるという負担付き遺贈(相続)にすることによって、相続人を拘束することは可能です。
例えば、「自身の長男は遺言者の全財産を相続する、その負担として自身の墓の墓じまいを行うものとする」といったものです。
ただし、墓じまいとは、管理者との交渉、撤去業者への発注等多大な時間と費用がかかるものです。
はたして祭祀承継者が多大な時間と費用を使ってまで墓じまいを実際に行うか、その実効性には疑問が残ります。
一般的に遺言書記載の負担付義務が履行されない場合、遺言執行者や他の相続人が履行を求めることはできますが、墓じまいについては「いずれは行うつもり」と言われると、不履行状態ともいえないことが多いです。
そこで、遺言者としては、親族に遺言書がある旨と墓じまい希望を事前に伝えておくことが望ましいといえるでしょう。
また、墓の管理者にもその旨伝えておくこと、いつまでにしてほしいと希望を残しておくこともオススメいたいます。
以上のように、祭祀承継については、相続財産とは異なるルールによって決せられます。
自身の墓や仏壇の取得者について希望があるならば、当事務所に所属しているような相続専門家に相談し、遺言書に書いておくことをオススメいたします。
そして、墓じまいについても、当事務所では提携先の行政書士や業者がおりますので、祭祀承継及び墓の処分についてお気軽にご相談ください。
執筆者 森俊介
行政書士森俊介事務所 代表行政書士
『相談者に寄り添う相続とすること』がモットー。触れた相談事例は2000件以上。相続を取り扱う司法書士・税理士・弁護士と連携しワンストップサービスを築く。各地でセミナー相談会を実施中。Youtube・Twitterでも相続・遺言情報を発信している。
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