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遺言者が、自身の全財産を動物園等に寄付したいと希望することがあります。
このように遺贈寄付する場合、実際はどのようなやり方になるのでしょうか。
また、その寄付先の選定は自由なのでしょうか。
本稿では、遺言書で全財産を遺贈寄付する場合の注意点について解説いたします。
動画解説もぜひご覧ください。
目次
・相続関係図付きの具体例
・遺言者・推定相続人・寄付先の状況
2、遺贈寄付の遺言書の問題点
・遺言による寄付とは
・遺贈(寄付)先の特定
・受遺者側は受け取る義務はない
・預貯金現金以外(不動産、株等)の処理
・遺言執行者の指定
・遺留分の存在
3、まとめ
・遺言書で全財産を遺贈寄付する場合について
・当事務所のような相続専門家への相談がオススメです
上の相続関係図のような事例を想定してみましょう。
相続関係図とは、相続関係説明図ともいい、本来亡くなった人(被相続人)とその相続人の関係が一覧になってまとまっている表のことをいいます。
また、遺言者の遺言作成時点では、相続人は推定相続人となります。
遺言書の推定相続人は、夫・長男が既に亡くなっているため、長女のみ1名です。
遺言者の状況としては、夫も長男も亡くなり、唯一の推定相続人の長女とは音信不通の状態です。
遺言者は、老後足繁く観に行っていた自宅近くの動物園に全財産(自宅、株、預貯金を)寄付をしたいと考えています。
自宅近くの動物園の方とは特に話をしていませんが、自分の死後に全財産を渡したいと思っています。
当該動物園のホームページには寄付のための案内もあったので、遺言による寄付も可能だと考えています。
寄付の案内を見る限り、当該動物園は公益法人が運営しているとのことでした。
遺言による寄付とは、上の例のように、遺言によって、自身の財産をNPO法人、公益法人等の民間非営利団体や国、地方公共団体等に寄付することを指します。
これは、亡くなった人(被相続人)の意思による寄付なので、寄付者は被相続人です。
そして、遺言の効力発生時(相続開始時)より、その寄付された財産は法人に帰属したものとみなします。
よって、遺言により財産を取得したのは、寄付を受ける当該法人となります。
ちなみに、一般論として、法人ですので原則相続税は課税されません。
ただし、相続税の負担を不当に減少するような結果になると認められる場合には、法人を個人とみなして法人にも相続税が課税されることがあります。
具体的なアドバイス、計算が必要な場合は税理士に相談しましょう。
遺贈(寄付先)の特定
では、遺言書による寄付についてどのように遺言書に書けばいいのでしょうか。
まず、寄付も遺贈(遺言により財産取得させること)の1つである以上、その相手方の特定が必要になります。
相手方が団体等の場合、団体の正式名称、主たる事務所等の所在場所、法人格の有無、代表者に関する事項等を十分に調査して、特定に欠けることがないようにしましょう。
遺言書への書き方は、特定さえされていれば、通常の遺贈の場合同様、「・・・を以下の団体に遺贈する」といった書き方で大丈夫です。
受遺者側は受け取る義務はない
そして、遺言は、遺言者の一方的な意思表示ですので、遺言書作成の際に、遺贈寄付の相手方より事前に同意を得る必要は法的には全くありません。
しかし、遺言の効力発生後実際に寄付を円滑に進めるためにも、事前に相手方と相談し、遺贈(寄付)先を特定し、遺言のにる寄付を受け付けてもらえるか等確認しておくことが望ましいでしょう。
近年では、インターネット等により、遺贈(寄付)先の特定、遺言による寄付の可否は判断つきやすくはなっています。
上の例でも、当該動物園が公益法人が運営しており、ホームページにて寄付の案内をしていることから、遺言による寄付が全くの無駄となる可能性は低いとは思いますが、円滑な遺言実行の実現のためにも、事前確認をしておくべきでしょう。
特に全財産について遺言による寄付をする場合に多いのですが、金銭の他に不動産や株等も寄付の対象財産となっていることがあります。
この場合、寄付先が、換価処分が困難であるとか、その維持・管理費等の問題から遺贈寄付を拒否されることも少なくありません。
実際、私が遺言者の寄付先のある公益法人に事前確認した際、不動産や株等は避けて欲しいと言われたことがあります。
このような財産を寄付したいとき、必ず寄付先に事前に確認するようにしましょう。
遺言による寄付を実現するために、遺言書に専門家等第三者の遺言執行者を指定しておくことを勧めます。
寄付は他の相続人にとって利益にならないことが多いので、利害関係者から寄付先に連絡することを期待するのは難しいです。
また、相続人によって遺言執行者の申立てがなされることを期待するのも同様に難しいでしょう。
円滑な遺言実行の実現のため、遺言執行者は死後の状況を想定して決めましょう。
遺言により寄付は、相続人が全くいない遺言者によってなされることが多いです。
ただ、上の例のように相続人がいても寄付したいという人もいます。
その場合、最低限保障されるべき遺産の割合である遺留分に注意しましょう。
寄付先によっては、遺留分が生じる場合や、相続人より異議・抗議がなされる場合には寄付を拒否することもあります。
そのような事情がある場合も、事前に寄付先に確認しておくことが必要です。
なお、相続人がいてもそれが兄弟や甥姪の場合には遺留分は生じません。
以上の通り、遺言書で全財産を遺贈寄付する場合、様々な注意点があります。
寄付先の特定、受け入れの可否、財産の種類、遺留分の有無、相続人との関係等、意外に考慮すべき事項が多いです。
自分の状況や財産を整理して、慎重に遺言書を作成するようにしましょう。
このように、遺言書による寄付は様々な実務上の注意点があります。
寄付先に拒否されてしまうと、せっかく思いを込めて作成した遺言書が無意味になってしまいます。
円滑な遺言実行の実現のため、専門家を遺言執行者に指定するよう勧めます。
当事務所では、遺言書作成、遺言執行代行ともにサポートすることができます。
当事務所のような相続専門家にまず相談することをオススメいたします。
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執筆者 森俊介
行政書士森俊介事務所 代表行政書士
『相談者に寄り添う相続とすること』がモットー。触れた相談事例は2000件以上。相続を取り扱う司法書士・税理士・弁護士と連携しワンストップサービスを築く。各地でセミナー相談会を実施中。Youtube・Twitterでも相続・遺言情報を発信している。
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