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◆ 遺産分割協議書に署名・実印押印する前に確認すべきポイントについて解説いたします
相続開始後、突然相続人に遺産分割協議書が郵送されてくることがあります。
そのような場合、署名・実印押印する前にどのような点を確認すべきなのでしょうか。
本稿では、遺産分割協議書に署名・実印押印する前に絶対確認すべきポイントについて解説いたします。
動画解説もぜひご覧ください。
目次
・葬儀後に遺産分割協議書が郵送されてきた
・遺産分割協議書に署名・実印押印して大丈夫か
2、署名・実印押印前に絶対に確認すべきこと
・遺言書があるか
・借金がないか
・遺産の時期・範囲・評価額
・遺産分割協議書に署名・実印押印前に絶対に確認すべきこと
・当事務所のような相続専門家への相談がオススメです
上の図のような具体例で考えてみましょう。
亡くなった人に、妻、長男、長女と3名相続人がいます。
妻と長男は実家で同居していますが、長女は別居しています。
葬儀が行われ、数週間後、妻・長男と別居している長女の家にある郵便物が届きました。
その郵便物の封筒の中には、「遺産分割協議書」が入っていました。
長女は事前に何も聞いていなかったので、早速母(被相続人の妻)・兄(被相続人の長男)に電話してみました。
そこで、「実家は長男が相続し、他の財産は3分割しようと思う。異論ないと思うのでその書類(遺産分割協議書)に署名・実印押印してくれ」と母・兄から言われました。
長女としては、長男が親と同居して普段より世話をしているし、預貯金については自分の取り分もあるので特に異論はありませんでした。
とはいえ、「突然『遺産分割協議書』という非常に重要な書類が送られてきて、簡単にそれに署名・実印押印してしまって大丈夫だろうか」と不安に感じています。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果を記したものです。
そのため、上の例のように相続人の長女と協議することなしに協議書を作成・郵送すること自体本来おかしなことです。
遺産分割協議書に署名・実印押印するということは、その遺産分割協議結果に納得し同意していることになります。
上の例のように、その遺産分割協議書の内容に納得している、異論はないという場合であったとしても、署名・実印押印前に確認すべきことがいくつかあります。
遺産分割協議書に署名・実印押印する前に絶対確認すべきことの1つは、遺言書があるかを確認することです。
亡くなった人が遺言書を作成していれば、遺言書の方が遺産分割協議より優先するためです。
遺言書があっても遺産分割協議の方が優先するケースもあります。
それは、遺言書があってもその内容に相続人(および受遺者・遺言執行者)全員が反対したときです。
この場合、遺言書ではなく遺産分割協議による相続となります。
ただし、相続人のうち1人でも遺言書の内容に賛成していれば、遺言書が優先されます。
したがって、遺言書の有無・内容で遺産分割協議の必要性も変わってくるので、遺言書の存在は重要です。
遺産分割協議書に署名・実印押印する前に絶対確認すべきことの2つ目は、亡くなった人に借金がないかを確認することです。
亡くなった人に借金がある場合、家庭裁判所への相続放棄を検討する必要があります。
一般的に、亡くなった人のプラスの財産、マイナスの財産を調べて、マイナスの財産の方が大きい場合は、相続放棄を選択します。
もしくは、借金の額がそれほど大きくないので、「長男が全て借入金を承継負担する」等、借金の負担割合を相続人間で話し合うこともあります。
このような取り決めを遺産分割協議書に記すことで、相続人間では有効となります。
ただし、このような取り決めも債権者に対しては主張することはできません。
債権者から借金の返済を請求された場合には、各相続人は法定相続分の限りで支払わなければなりません。
以上のように、相続放棄や遺産分割協議書の記載事項にかかわってくるので、借金の有無も非常に重要なのです。
遺産分割協議書に署名・実印押印する前に絶対確認すべきことの3つ目は、①遺産の時期②遺産の範囲③遺産の評価額を確認することです。
上の例のように、1人の相続人が全財産を相続するという場合ではないときに、特に重要となります。
なぜならば、遺産全体の公平性、すなわち遺産全てから見て公平な分け方といえるかを気にする相続人が多いためです。
また、遺産自体の合意、すなわち各相続人が把握している遺産と全員で合意した遺産が同一かも、相続人としては気にかかることでしょう。
①遺産の時期については、相続開始時(死亡時)か協議時か等です。
亡くなってから1か月後に遺産分割協議をする場合だと、どちらの時点でも遺産が大きく変わっていることはほぼないでしょう。
しかし、例えば亡くなってから10年後に遺産分割協議をする場合だと、現預貯金の多くを親族が使ってしまっていることもあり、遺産が当初から減ってしまっていること等考えられます。
そのため、どの時期の遺産を基準にするかが非常に重要となります。
相続人間の合意によって遺産の時期は決まります。
ただし、相続人間で争いになって協議時点と判断した裁判例もあります。
②遺産の範囲については、過去の亡くなった人から相続人の贈与等を特別受益として持ち戻して遺産の範囲に含めるか等です。
特別受益とは、特定の相続人のみが特別に得ていた利益のことです。
特別受益があった場合、これを考慮せずに相続を行うと不公平となります。
そこで、特別受益を考慮して遺産に「持ち戻し」して計算することができます。
そうすることで、公平な遺産分割ができるというわけです。
また、居宅に保管している現金であるタンス預金や、他の人の名義だが実際は亡くなった人が所有しているといえるような名義財産についても、どの範囲まで遺産の範囲といえるか重要になります。
基本的には、相続人間の合意によって遺産の範囲も決まります。
③遺産の評価額については、株や不動産のような、預貯金残高と違いパッと見で価値がわかるわけではない財産について問題になります。
特に不動産の評価額は、A市場価格、B固定資産税評価額、C路線価等のうちからどの価格を基準にするかによって、遺産の取得分が何百万円~何千万円変わってくることがあります。
相続人間の合意によって、遺産の評価額も決まります。
①遺産の時期②遺産の範囲③遺産の評価額によって遺産分割協議が大きく変わるのはどのようなケースでしょうか。
以下、具体例を想定します。
上の図の例でいうと、
相続開始時の遺産については、
預貯金 3000万円(過去に結婚時に長女に300万円贈与)
実家(市場価格 1000万円 固定資産税評価額600万円 路線価 700万円)
となります。
その半年後、遺産分割協議時の遺産については、
預貯金 1500万円(過去に結婚時に長女に300万円贈与)
現金 500万円
実家(市場価格 1200万円 固定資産税評価額600万円 路線価 700万円)
となりました。
遺産の時期を、相続開始時にするか協議時にするかによって、現預貯金は1000万円も異なります。
また、不動産の市場価格も200万円も違ってきます。
遺産の範囲についても、過去に亡くなった人から長女に渡した300万円を特別受益として持ち戻し遺産分割協議の対象とするか否かで遺産額が異なり、長女の取り分も変わってくる可能性があります。
遺産の額についても、実家をA市場価格で評価するのか、B固定資産税評価額やC路線価で評価するのかによって、大きく実家の価額が変わります。
以上の通り、このようなケースですと、遺産の時期・範囲・額の合意によって相続が変わってくるのです。
以上の通り、遺産分割協議書に署名・実印押印する前に、遺言書の有無、借金の有無、遺産の時期・範囲・額を確認しましょう。
いずれも遺産分割協議自体に影響を及ぼすものです。
安易に遺産分割協議書に署名・実印押印してしまって、後々トラブルとなるケースもあります。
どこまでを相続財産とするかについて、他の相続人との関係で問題となることもあります。
このような事態を避けるため、相続専門家にまずは相談してみることをオススメいたします。
執筆者 森俊介
行政書士森俊介事務所 代表行政書士
『相談者に寄り添う相続とすること』がモットー。触れた相談事例は2000件以上。相続を取り扱う司法書士・税理士・弁護士と連携しワンストップサービスを築く。各地でセミナー相談会を実施中。Youtube・Twitterでも相続・遺言情報を発信している。
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